君に染まる(前編)
先輩が卒業してから1度も会ってない。
私のこと覚えててくれてるかな?
楓ちゃんに背中を押されたとはいえ、久しぶりに植野先輩に会えることにだんだん気持ちが軽くなっていく。
けど、そんな気持ちとはうらはらに人気が無くなっていく辺りにまた不安な気持ちが増していく。
講堂の裏にこんなとこあるんだ…。
木がまばらに生えていて裏庭のような場所だ。
以外と広いその場所に困りながらきょろきょろと先輩を探していると。
「何してんの?」
聞こえてきた声。
振り返ると男子生徒が2人いた。
声をかけてきたであろう人は、倉庫の壁にもたれて座り優しそうな雰囲気で微笑みながら私を見つめる。
もう1人の人は地面に横になり、胸から上に制服のブレザーをかけて寝ているようで私の存在にも気付いていなさそう。
「リボンの色が違うね…新入生?」
そう言われ、自分の胸元に視線を下げる。
この学校は男子のネクタイと女子のリボンの色が学年ごとに違う。
この人のネクタイ…2年生の色だ。
と、いうことは、先輩?
「新入生がこんなとこになんの用?」
「あ…人を探してて」
「人?」
「生徒会長の植野先輩を…こっちに来たはずなんですけど見てませんか?」
「ああ…アイツなら…」
優しそうな先輩がそう言ったと同時。