君に染まる(前編)
慌てて駆けより先輩の腕を掴んだ。
「何してるんですか!」
「引っ込んでろ!!」
あたしを振り払い
植野先輩に再び殴りかかる。
次第に集まってくる野次馬。
…止めなくちゃ。
早く止めなくちゃ。
そう焦ったあたしは、
無意識のうちに
獅堂先輩に思いっきり抱きついていた。
「…ダメ!」
「離せ!!!」
「殴っちゃダメ!!!」
殴ろうとする先輩の腕ごと
必死に抑え込む。
「殴っちゃダメです…ダメです…」
あたしの頼みを聞いてくれたのか、
次第に力をゆるめた先輩は
ゆっくり植野先輩から離れた。
「いててっ……」
「植野くん大丈夫!?」
植野先輩に駆けよる女の人。
「…なんなんだよ…
ちょっと優しくしただけで勘違い…」