君に染まる(前編)
「大人しそうな顔して男にビンタなんて」
そう言った獅堂先輩は
あたしの横に座った。
「まぁ…その…よく分かんねぇけどさ…
元気出せよ…」
頭をかきながらそう呟く。
「…励ましてくれてるんですか?」
「…うるせっ」
初めて見る獅堂先輩の照れた表情に
思わず笑った瞬間、
また涙が溢れてきた。
「だぁー!!
ピーピー泣いてんじゃねえよ!」
うつむくあたしの頭に手を置いた先輩は、
「もう泣くな」
何度もそう言ってくれた。
「あんな男の為に
自分の価値下げるようなことすんな」
不器用な先輩の手つき。
だけど…すごく温かかった…。