君に染まる(前編)
「女と真っ最中」
今まで横になっていた人がいきなり口を開いた。
体を起こしてゆっくり私を見つめてくる。
ドキッ
な…に?…この人…。
見つめられただけで体中が熱くなる。
獲物を狙う獣のようなするどい瞳。
目をそらせない。
それに、すごいイケメン。
「…って、え?」
思わず見とれていた私はその人の発言を思い出す。
“女と真っ最中”って、どういう意味?
「会長はお楽しみ中」
ニヤッと笑みを浮かべる。
「あの…それってどういう…」
「どういうって、そのまんまだろ。会長も大変だよな。なあ?優」
「誠実キャラ壊せないもんね。絶対疲れるよ、俺は嫌だ」
「あの、仰ってる意味が分からないんですけど…」
「お前新入生のくせにアイツともうそういう関係?アイツ追いかけて裏庭来る奴なんて素顔知ってる奴しかいねえし」
「…どういう意味ですか?」
理解できない私に先輩は怪訝そうな顔をする。
「は?ちげぇの?」
「私は…植野先輩が講堂の裏に歩いていくのを見かけたので追いかけて来ただけで…」
「だから、アイツとヤりにきたんだろ?アイツならいつものとこで“お楽しみ中”ってさっきから言ってんだろ」
「いつものとこって言われても…」