君に染まる(前編)



話にならないというように大げさな溜息をつくと、立ち上がり私の目の前に立ちはだかった。



「お前、会長の裏の顔知らねぇの?」

「裏の顔?」

「表では誠実で真面目な生徒会長。けど、裏では女ったらしの遊び人。教師や生徒の前ではいい男気取ってるけど、裏では女口説きまくってるって噂で―――」

「植野先輩はそんな人じゃありません!」


思わず大声をあげた。

植野先輩の悪口を言われてつい腹が立った。

先輩をキッと睨む。


「でたらめなこと言わないでください!植野先輩に限ってそんなこと…」


そう、言い終えるか否か。



ゾクッ


私を見下ろすその人の目つきが変わり、一瞬で瞳に攻撃性が増す。



「お前、俺に意見すんの?」

体が動かない。



「嘘つき呼ばわりすんの?この、俺を」


圧倒的な威圧感に背筋が凍る。

怖い…。


それでもなぜか目をそらせないでいると、顎を掴まれクイッと顔を上に向けられた。


「ふーん…」


そのままじっと見つめられる。


な、何?


頭の中にたくさんのはてなが浮かぶ私にその人は信じられない行動をとった。



…………え?



…何が…起こってるの……?



状況が飲み込めない私は必死に理解しようと頭をフル回転させる。

それでもやっぱり理解できなかった。




この人と私の、唇が重なっている。



…キス?



キスされてるの?


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