君に染まる(前編)
これでこの女も
会長を諦めて俺の思い通りに…。
そう思って顔を覗きこんだら…涙。
女の頬を涙が流れた。
それを見た瞬間、
俺の中で何かが切れたんだ。
気付いた時には走り出してて、
気付いた時には会長を殴ってた。
…ムカついた。
この女を泣かせた会長にムカついた。
俺を拒んだことは許せねぇけど…
真剣だったんだ、この女は。
その気持ちを会長は踏みにじった。
無我夢中で殴っていると
女が俺を止めてきた。
その必死さに1度は力をゆるめたけど、
「…なんなんだよ…
ちょっと優しくしただけで勘違い…」
会長のその言葉を聞いた瞬間
また怒りがこみ上げてきて
殴りかかろうとした俺。
けど…。
パシッ
俺よりも先に手をあげたのは女だった。
「……ごめんなさい」
小さな声で謝ると
そのまま裏庭の方へ消えていった。