君に染まる(前編)
○2章
獅堂創吾という男
「真っ赤だねー…目」
さっきからあたしの顔を覗きこんでは
そう言う楓ちゃん。
「ショックだろうけど、元気出しなよ?
あんな人未央には合わないって」
少し怒ったように
あたしの髪をくしゃくしゃとする。
あたしは小さくうなずいて
下駄箱から上靴を取り出した。
昨日、植野先輩の裏の顔を知った。
憧れだったせいなのかな…
1日経ってもショックが無くならない。
「あ、そういえば、パンあげた?」
「パン…ああ、獅堂先輩?あげたよ」
「キレられなかった?」
「え?うん。
『サンキュー』って受け取ってくれた」
「うっそー!?
あんなので納得してくれたの!?」
あんなのって…。
「あの獅堂先輩だよ?
なにかよからぬことでも
企んでるんじゃ…」
「未央ちゃん」
楓ちゃんの言葉に重なった
あたしを呼ぶ声。
あたしと楓ちゃんは
お互いに顔を見合わせて青ざめた。