君に染まる(前編)
「おはよう」
振り返ったその場所にいたのは
笑顔を浮かべる植野先輩。
「お…はよう…ございます…」
「ちょっといい?」
「え?……はい」
戸惑いながらも小さくうなずいた。
「…あたし、先に行くね?」
そう言った楓ちゃんは
植野先輩に小さくお辞儀をした。
正直「置いてかないで…」って思うけど、
楓ちゃんは関係無いもんね。
教室へ向かう
楓ちゃんの後姿を見つめながら
少し気合を入れる。
「…何か、用ですか?」
植野先輩を見上げた。
「うん…謝ろうと思って」
「え?」
「昨日のこと…
ひどいこと言って…傷つけたよね?
本当にごめん…」
…あたしダメだな。
植野先輩はひどい人だって分かってても…
この笑顔に弱い。
「許して…くれる?」