君に染まる(前編)
「…はい」
ほんと…ダメ…。
「ほんと?じゃあ仲直り」
そう言ってあたしに手をさしだす先輩。
その手を握ろうとした時、
「ふざけんな」
あたしの手は
横から伸びてきた手にがっちり掴まれた。
「…え…獅堂先輩!?」
驚くあたしを引き寄せたと同時に
植野先輩を思い切り蹴った。
その反動で植野先輩が床に倒れこむ。
「……っ……何するんだよ獅堂くん」
「…あんなこと言っといて許してくれ?
何ほざいてんだ、ぶっ殺すぞ」
横で見ているあたしですら
ひるんでしまうような獅堂先輩の目つき。
「今後いっさい未央に近付くな。
これ以上こいつに関わったら
ただじゃおかねぇ」
そんな獅堂先輩に
みるみる顔色を変えた植野先輩は
何も言わず逃げていった。
「…弱ぇ奴」
ぼそっとそう言うと
呆然とするあたしの顔を覗きこんできた。
「はよ」