君に染まる(前編)


「……あ…おはようございます」



「昨日のパン、
Ⅰ類にしてはなかなか美味かったぞ」



「そうですか…それは良かったです…」



そう言いながら
顔を近づけてくる先輩から顔をそらした。



「あ…の…離してくれませんか?
教室行きたいんで…」



肩を抱く先輩の体を押し返すと
さっきより強く抱きしめられた。



「お前、俺の女になれ」



……………。



「は?」



突然の言葉にぽかーんと口を開ける。



「お前のこと気に入った。俺の女になれ」



「い…嫌です!」



「即答すんな!」



「だ、だって…」



タイプじゃないし…
っていうか、むしろ苦手だし…。



至近距離の先輩から目をそらしたまま
言葉につまっていると、



「獅堂くん!?」



いつのまに集まってきたのか
獅堂先輩のファンが
一気に先輩の周りを囲みだした。


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