涙の音
しばらくして目をゆっくりと開けて一呼吸してから口を開けた。


「…凄い…音が切れてない。無駄がない…」


「ギターは昔から好きで弾いてたんだけどさ、歌が…歌えなくて。」


「そっか…でも、私なんかでいいの??」


「うん、僕の曲の想像に合うんだ。」




それが…出会いだ。


そして今。徐々に徐々に活躍の幅を広げている。



家に着くと、いつもならエレベーターで5階まで上がるのにルンルンで階段をかけあがって行った。


勿論。僕は、エレベーターで上がる。


奈未は、合鍵を持っているから先に入っていたみたいだ。


嬉しい事があると周りが見えなくなる癖があり時々もの凄く不安になる。


「よく、今まで1人で暮らして来たよ。」


なんて呟く。


奈未は、高校を卒業と共に、この都市に身一つとギター一本を抱えて出てきたみたいだ。


まぁ、中学校、高校とアルバイトをしてお金を為続けたみたいだけど。


親の反対を押しきったと言えば簡単に伝わるだろう。


そこまでして音楽をやりたかったみたいだ。

僕はと言えば。高校を卒業後、就職をしながら音楽を続けた。


毎回路上ライブを見回って、耳に止まれば声をかける毎日だった。


だから、歌う事や音楽に対する事に関しては、奈未の方がかなり強い。


僕も憧れや夢は大いにあったけど。
それを現実化になっていくのに、上を上を…と先を考えるようになった。


そう…考えて他にない音楽を作る事が今の僕には夢となっていたからだ。
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