涙の音
number2 近づいていく夢
夏フェス 当日。
裏入り口へ入りと車を降りてスタッフの人たちに挨拶をする。
最初に歌っている人たちの大きいサウンドと大勢の歓声や熱気が裏からでも伝わってきた。
普段のコンサートよりも多いスタッフの多さと、コンテナがずらりと夏フェスのステージ裏に並んでいた。
それは、全てアーティスト控え室。
1人のスタッフが近づいてきて、グループ名を確認すると「こちらです」と言われ案内された。
控え室のドアをあけ、「どうぞ」と言ってドアを支えていた。
そんな些細な事でさえ新鮮で感動をしていた奈未は、スタッフに深く頭を下げて控え室へ入った。
「一時間後スタンバイです。10分前に呼びにきます。よろしくお願いします。」
そう言って部屋をあとにする。
「スゴいね!スゴいね!」
「落ち着けよ。歌詞とか頭から跳ばれると失敗に終わるんだから」
「そんな事しないよ~」
僕たちの出番は、アーティスト35組出演する中の10番目。
遅いようで早い時間だが、緊張は近づいてくる事に激しさを増し、落ち着けようとギターケースからギターを取り出して、パイプ椅子に座り軽く新曲の練習をした。
奈未は、控え室の隅にある着替えるスペースに入り、カーテンを閉めて着替えをしていた。
しばらくして出てくると出来立てホヤホヤのTシャツに感動し、鏡のまえでTシャツをみていた。
そうこうしているうちにスタッフが呼びにきた。