涙の音
「………難聴のなりかけというか。生まれつき持っているものみたいで、そこに強い音量や激しい疲れがたまると倒れたりすると」
「…それでリハビリ?」
「定期的な検査で、少しずつ耳を慣らしていく感覚みたいです」
「困るわね。今回の新曲で上も動き始めてる。それに、ドラマ主題歌にも決まってメジャーも正式に決まったの。それに、数件の音楽番組出演のオファーも来てるわ。」
「休みが取れない…と」
「そうね。これを逃すとまた逆戻りよ。見捨てられるも同然ね。」
「……じゃあせめて奈未、本人に話して理解を」
「えぇ、それも必要ね。けど今メジャーや仕事を目の前にして検査を選ばれても困るのよ。」
その言葉に、雪斗は怒りがはしる。
「じゃあ奈未を、ほおっておくと?そんなに仕事が大事かよっ…奈未の耳が聞こえなくなったらどうするんだよっ歌えなくなるだろっ!!!!!」
マネージャーは、軽くため息をついたと共に信号で車が止まる。
「わかってる。でもまだ、リハビリの状態で2、3ヶ月開けるくらいなんとかなるでしょう?」
「…2、3ヶ月ですか。」
「その後は必ずこっちでもオフを取れるよう調整するから。」
「………」
言葉がでなかった。
これでいいのか、頭で考えていた。