涙の音
「……わかりました。必ず約束してください」
しばらく経って、事務所に着き地下の駐車場に車を止めて降りた瞬間。
そう、返事をした。
マネージャーは、笑顔で「了解」と言ったが、その笑顔は悪に見えた。
編集室につくと、奈未が黙々と仕事をしている。
その後ろ姿をみて、再び罪悪感が襲う。
“やっぱり、言った方が…”
そう思っていると、マネージャーが肩に手を置いて「大丈夫よ」と一言言った。
「…」
そんな言葉で「はいそうですか」なんて言えるわけがない。
「あっ雪斗ー手伝って!」
「…わかったよ」
編集がほぼ終わっているプロモーションビデオを最初から見直す。
それは、凄くきれいで、誰もが目に止まるようなプロモーションビデオだ。
「……いいんじゃないか?何処も直すとこないよ。」
「でもね、このアップで涙を流す女の人の場面。なんか物足りないと言うか…」
「ようするに在り来たりにしたくないんだろ。じゃあ、目の部分をアップにしてから、涙が流れている部分を映して、全体にすれば曲の流れにも合うだろ?」
「そっか!」
とりあえず、2、3ヶ月くらいは…
そう自分の中でいい聞かせた。
“大丈夫だと思ったから。”
ただそんな甘い考えを 奈未に押し付けた。