不器用な指先

『……で?』


彼の視線の先を追う私に、問い掛ける声が響く。

『でって……何が…?』

『…おねーさんの方は…何で…そんなに悲しそうな顔してたの?』



……何でって……


またあの二人の光景が頭をよぎって

切なさか憎しみか分からない何かが

私の心をグッと押し付けた。


『俺は自分のことちゃんと話したんだからさ、おねーさんも教えてよ』

『………』


『…相手が話したら自分のも話すのが礼儀なんでしょ…?それとも…それが通用するのは自分に都合のいい年齢の話の時だけ?』


『………っ』


キッと目を吊り上げて顔を上げる私に、彼はまたもや余裕の笑みを浮かべた。


…なんて面倒なやつ…


しかも、その余裕の笑みが年下の少年から浮かべられたということが尚更私の表情をふて腐れさせた。







『……やっぱり振られたんだ…?』

『…っ振られたんじゃないっ!ただ嘘付かれ……っ』

『……ふーん…嘘付かれちゃってたんだ…?』



あぁ…あたしのバカ…




---そうやってむきになるとこも…俺は好きだけどな…----



いくら透がそう言ってくれてたとはいえ、私はこの単純で熱の入りやすい自分の思考回路が大嫌いだった。

結局

その私の性格のせいで

人の話も聞かずに思い込んで突っ走ってしまう性格のせいで



透は


帰らぬ人となってしまうのだから……