不器用な指先

一人取り残された部屋で水気を含んだタオルをギュッと握り締める。


何よ…

年下のくせに……



閉じられた扉の向こうからシャワーの音が響き始めた。



この音が止めば…

このシャワーの音が止まれば私は……



無意識のうちにタオルを握る力が強まっていた。




『……別に…一回くらい……』




言い聞かせるように呟く。

微かに水音が聞こえる小さな部屋に響いた自分の声。


つまらない意地を張っている自分に気付きながらも、わざと気付いてないふりをしてベッドに腰かけた。



ふと自分がさっきまで履いていたデニムのポケットを探る。




手にした携帯の先端にある小さなランプが点滅している。


未読メールの存在を示すそのランプに、少しだけ胸が痛んだ。


まだ…

透は私を探しているのだろうか…




聞こえてくるシャワーの音からするに、彼はまだ出てきそうにもない。



少し…

少しメールの件数を見るだけよ…

透からのメールを読むわけじゃない…

件数だけ……




例え私が携帯を見ているのを彼に目撃されたからといって、たいした不都合が生じるわけではない。


だけどあれだけ強気に帰らないと言い張った以上、透のことを気にしている自分を見られたくはなかった。




私はゆっくりと携帯を開く…



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