不器用な指先
透からのメールに合わせられたカーソル。
あとほんの少し力を入れてこのボタンを押せば
透からのメールを読むことができる…
決定ボタンの上に置いたままの親指が汗で滑る。
もしこのまま透と連絡を取らないままだったら…
私は……
透が私を探し回っている間に
他の男に抱かれることになるの…?
透が何度もメールを送って
何度も電話をかけて
夜の道を走り回っているときに
私は見知らぬ男の腕の中にいることになるの…?
…ドクンと
…心臓が罪色の血を送り出した…
ボタンを押して透からのメールを見てしまわないように、親指をかろうじて下にずらしてカーソルキーを押す。
無機質にスクロールされる液晶画面。
胸が痛むくらいに同じ名前が連なっている。
私が透の家を飛び出したのは夕方の5時半過ぎだった。
あれから約3時間もの間…
このメールボックスには次々と……
ふと
ボタンを押す手が止まった。