不器用な指先
ことを終えた後、何故か響は不機嫌な顔を浮かべている。
私は不思議そうな表情で問いかけた。
『ね…どしたの…?』
響は私の髪をすく指の動きを止める。
『…ずっと気になってんだよなー…』
『…何が…?』
ふと響の視線が私の身体を越えて、床に転げ落ちた物を捕らえた。
『…あれ…ずっとチカチカ光ってるけど…?』
私はふと後ろを振り向いて、響が見つめているものに視線を落とした。
携帯の青いランプがチカチカと光っている。
未読メールが一通でも残っている限り、私の携帯はチカチカと光を発し続ける。
私にもそれが見えていたということは、響にも当然見えていたのだろう。
私は再び響の方を振り向く。
肘を付いている響に対し、寝転んだままの私は、響の顔を見上げるような格好になってしまっていた。
『…してる時も気になってた…?』
私がそう尋ねると、響は携帯から私に視線を戻しながら答えた。
『……うん……』
少し頬を膨らますその表情に愛しさを感じる。
身体を重ねたからだろうか。
まだ出会って数時間
交わした言葉も少ない
知っていることははるかに少ない
それでも何故か、不思議と情が湧いているのを感じていた。
何かの番組で聞いたことがある。
女性はその行為に、感情を伴わせてしまう。
だが、男性は行為と感情を全く別物として考えることができるのだ、と。
だから男性は浮気をする生き物だと言われると、コメンテーターのような人が言っていた。
じゃあ、こんな気持ちになっているのは私だけで、響は何の愛情も感じてくれていないのだろうか……
もしそうならば…
少し寂しい…
半ば無意識に響の輪郭に手を延ばしていた。
そしてその手が響の頬に触れそうになった瞬間…
『あ』
響が小さく言葉を零した。