不器用な指先
身体を起こしながら、響が私に話し掛ける。
『実冬…電話…誰からだったんだ?』
電話…
そうだ…今…
電話が…かかってきて…
お…母さん…
そう…透のお母さんから…
透の…
『おい、どうかしたのか?』
魂が抜け落ちた私の肩を響が掴む。
その衝動すら、今の私には何の意味もない。
『…と…る……』
『え?』
透…
透が…トラックに……
『あ…あぁ………』
『……実冬…?…っておい!』
響を押しのけて、ベッドから飛び降りる。
『どうしたんだよ実冬!』
私はいまだ感覚を失ったままの身体を無理矢理衣服の中に詰め込んだ。
『…何かあったのか!?』
もはや響の問い掛けに答えられるほどの思考力など持ち合わせてなどいない。
チカチカと青く光る携帯をデニムのポケットに押し込む。
『あっえっ…ちょ、おい実冬!!』
響の方を一度も振り返ることなく、私はホテルの部屋を飛び出した。