不器用な指先
自動ドアの反応がこんなにじれったく思えた覚えはない。
人の気も知らないで冷静に開く自動ドアを手でこじ開け、病院の受付へと駆け込んだ。
『はぁっ…あっ…あの…っ』
『どうされました?』
受付のカウンターに置いた手がガクガクと震え出す。
私に対応しようとした看護婦の顔を見た途端、此処が紛れもなく病院なのだという実感がわいてきて、怖くてたまらなくなった。
涙目で震える私に、看護婦は心配そうに問い掛ける。
『…どうされました?』
『あの…あの……っ』
怖くて透の名前が言葉にならない。
―城澤透―
頭の中では、心の中では幾度となく叫び続けている透の名前が、怖くて言葉に出来なかった。
まるでテレビドラマのような状況。
お願い。
お願い。どうか間違いでありますように。
透のお母さんの勘違いでありますように。
そんな人は運ばれて来ていないと、お願いだから…そう言って……!!
『あの…此処に城…』
その時