不器用な指先

すると、その二人の後ろから、一人の青年が現れた。

彼はお父さんとお母さんの肩に手を載せて囁く。

『ほら…お母さん…こっちで待ちましょう…?』


お父さんは、彼の方を振り向いて、―すまない―とでも言うように申し訳なさげに微笑んだ。


『ほら母さん…あっちの椅子に座ろう…』


そう言ってお父さんは優しくお母さんを立ち上がらせる。

今にも崩れそうなお母さんを抱え、私に気付かないまま椅子へと移動するお父さん。


その二人を見ながら悲痛に顔を歪めるその青年と目が合った。





『実冬…ちゃん…』



目を見開いて私の名前を零すのは、透の親友の信一さんだった。
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