不器用な指先
前の彼氏に浮気された時は、すらすらと文句が出てきて、そんなに怒ってもいなかったのに、自分でも驚くくらいに暴言を吐いて相手を困らせた。
でも
今回は…透と優花を見た時は
全身の機能が停止して
ただ人混みに消えていく二人を見送った。
その時思った。
本当にショックな時って
人は
言葉が出ないのだと。
自分の感情が分かってもいないのに
それを言葉にするなんて
出来っこないのだと。
力の入れ方の分からない拳が震えるのを感じながら、土曜の街中で一人立ち尽くした。
あぁ
私は本当に透を信じていたんだ
初めて感じた身体が真っ白になる感覚が
改めて透への想いを痛感させた。
もちろんその日の夜に透からかかってきた電話はひどいものだった。