粉雪の降る日【完】
粉雪の降る日
「雪、降らないかなぁ」
「──まーた出たよ!
粉雪(コユキ)の“雪降らないかなぁ”!」
頬杖をついて、窓を見ながらいうあたしに
けらけらと笑いながら友達の飛鳥(アスカ)が言う。
「もうっ別にいいでしょ!
だって雪は…」
「“大切な人との思い出なんだから”?」
あたしの言葉を先取りして、もう一度けらけら笑う。
その様子に、さすがのあたしもむぅーっとむくれる。
「でもさーそんなに言うなら、どんな思い出なのか
教えてくれたっていいじゃん」
あたしの顔を覗き込むようにして言う飛鳥。
「だーめ!
大切な約束だから」
当時中学一年生。
今から約五年も前のこと。
雪の降る日にした、淡い恋の約束。
その約束は、果たされることはなかったけど。
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