粉雪の降る日【完】
粉雪の降る日


「雪、降らないかなぁ」


「──まーた出たよ!

粉雪(コユキ)の“雪降らないかなぁ”!」



頬杖をついて、窓を見ながらいうあたしに
けらけらと笑いながら友達の飛鳥(アスカ)が言う。


「もうっ別にいいでしょ!


だって雪は…」


「“大切な人との思い出なんだから”?」


あたしの言葉を先取りして、もう一度けらけら笑う。



その様子に、さすがのあたしもむぅーっとむくれる。




「でもさーそんなに言うなら、どんな思い出なのか
教えてくれたっていいじゃん」


あたしの顔を覗き込むようにして言う飛鳥。



「だーめ!

大切な約束だから」



当時中学一年生。


今から約五年も前のこと。





雪の降る日にした、淡い恋の約束。


その約束は、果たされることはなかったけど。


< 1 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop