少女王子さま 〜田舎娘に小鳥のワルツを〜
「………それにしても、」
ミミは呟きながら、馬車の横を馬に乗って走っている少年をちらりと盗み見た。
…こいつが、この国の王子様?
少年はマントのフードをかぶって、目立つ金色の髪を隠すようにしている。
その下から伺える整った顔は、今は仏頂面であった。
「あんなところに王子がいるなんて、気づくわけないじゃん……。」
まったくひどい話である。
少女はこの国の王位継承者に、変態だの不審者だの叫んでいたのだ。
だいたい、騎士服なんて着ていて、気づけというのも無理なのだけど。
「…は!まさかあたし打ち首っ?」
「そんなことするか!」
アホかおまえ!と横から怒鳴られて、少女はむっとする。
主語を言ってないのに何のことか分かったらしい少年に、また悔しくなった。
「え、だって…」
「ミミ様、リュシリカ殿下はそのようなことはしませんよ。」
エドゥアールがにっこりと柔らかく口を挟んできたので、今度はしゅんと肩を落とした。
しかし視界の端に見えた建物に、少女は再び顔を上げる。