少女王子さま 〜田舎娘に小鳥のワルツを〜
「………すまなかったな。親御さんに何も言えないまま連れてきて。」
そしてぽつりと呟いた少年に、ミミはきょとんとしてから、ああと言葉をもらす。
「大丈夫だよ。あたし家族いないから、そこは心配いらないの。」
「え?」
その何でもないように放たれた言葉に、少年は内心びっくりしながら少女を見返した。
「まあ、王子のあれはほんとーに誘拐っぽかったけど…もういいよ。あたし、出来るだけやってみる。間に合うか分かんないけど…。」
本に視線を戻しながら話を微妙にそらす少女からは、それが故意なのかどうかは読み取れない。
もしかしたらあまり聞かれたくないことなのかもしれない、と少年の方も話を変えることにする。