少女王子さま 〜田舎娘に小鳥のワルツを〜

「………すまなかったな。親御さんに何も言えないまま連れてきて。」

そしてぽつりと呟いた少年に、ミミはきょとんとしてから、ああと言葉をもらす。

「大丈夫だよ。あたし家族いないから、そこは心配いらないの。」

「え?」

その何でもないように放たれた言葉に、少年は内心びっくりしながら少女を見返した。

「まあ、王子のあれはほんとーに誘拐っぽかったけど…もういいよ。あたし、出来るだけやってみる。間に合うか分かんないけど…。」

本に視線を戻しながら話を微妙にそらす少女からは、それが故意なのかどうかは読み取れない。

もしかしたらあまり聞かれたくないことなのかもしれない、と少年の方も話を変えることにする。

< 82 / 113 >

この作品をシェア

pagetop