魚と青年
 魚の宇宙人はアイドルの姿のままケラケラと笑う。

 冗談だったのか、ホッとする反面、怒りがジワジワと込み上げてきた。

 いったい誰のせいでこんな事になっていると思っているんだ!冗談なんて言っている場合じゃないだろう。

 僕はこの時、魚の宇宙人を居候させた事を大いに後悔していた。魚の宇宙人のおかげで僕の寿命は短くなるばかりだ。

「まあ、こんな騒ぎになったのはワシのせいみたいじゃから何とかせねばのう」

 どう聞いても責任など感じていないような、間延びした口調で魚の宇宙人は言うと、変な踊りを始めた。

 リンボーダンスのような踊りを音楽もないのにノリノリで踊り始めた巨乳アイドル。

 はっきり言ってその姿は尋常でない。

「オイ!何やってるんだよ」

「ウッ!ハ、ウハー」

「オイッてば!」

 魚の宇宙人は僕の言葉など聞こえないとばかりに無視して踊っている。

「ハッ!」

 ようやく踊り終わったらしい。

「お前、一体どういうつもりなんだ?」

「これでもう安心じゃ」
「何が?」

 息も切れ切れに、魚の宇宙人はさわやかに笑った。その顔には充実感が溢れている。僕には、何が何だか分からない。

「外を見てみるがいいぞ」

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