魚と青年
宇宙人シブトイゾ
 あれから一年が経った。

僕は、あのアパートで今も変わらず暮らしている。

最近、魚の宇宙人の事は思い出さなくなってきていた。

時間の流れというのは、僕が思っている以上に早いものだ。

今日もクタクタになって家に帰って来たところだ。

僕は家に帰ってすぐに風呂を準備した。

最近、我が家の風呂は大家さんの厚意で最新の全自動給湯や追炊き機能のついたものになっていた。

しかも、風呂に湯が溜まると『お風呂ができました』という音声アナウンスがお知らせしてくれる、お知らせ機能付。(素晴らしいの一言に尽きるネ!)

つまり、釜さえ洗っておいて、栓さえ閉じておけば、ボタン一つで勝手にお湯が溜まってくれるという便利な仕組みだ。

忙しい僕には有難い事この上ない。(ありがとう、大家さん!)

僕は給湯器のボタンを押し、着替えを準備した。そして、テレビを見ながら音声アナウンスを待つ。

テレビでは巨乳アイドルのリナちゃんが下手くそな歌を披露していた。

リナちゃんの笑顔が、変身した時の魚の宇宙人のものと重なる。

ズキンと胸が痛んだ。

『お風呂ができました』

 まるで僕の気持ちに反応したように音声アナウンスの声が流れた。
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