魚と青年
どうやら本気で怒っているらしい。

 僕の頭の中では一瞬、宇宙戦争という言葉が浮かんだ。もし、この自称、宇宙人を怒らせて、こいつが仲間と地球を侵略しに来たら……。

 そこまで考えて、僕は吹き出してしまった。

 魚に支配される人間ってどうよ?お笑いのネタにもならない。

「今まで、いろいろな地球人を見てきたが、お前のような失礼な奴は初めてじゃ!」

 宇宙人の言葉に、ますます笑いが止まらなくなった。

 常識的な魚に非常識な人間の僕。変な取り合わせだけれど、まあ、こういうのもアリって事にしておこう。

僕の中で宇宙人が怖いとか、魚だから変という感覚はなくなりつつあった。だってさ、宇宙人の外見が馴染みのある魚なんだぞ?

魚っていうのは人間に食べられる存在で、それが宇宙人と同じ形だなんて宇宙人のイメージ変わるよな。

宇宙人と出会った二時間後、僕は奴と意気投合して酒なんか酌み交わしていた。

 僕としては、こんな日常では考えられない現実に、酒を飲む事で逃げたかったのかもしれない。

魚の宇宙人は酒にずいぶん強いらしく、表情も変えず、まるで水でも飲むように酒をあおっていた。
< 4 / 18 >

この作品をシェア

pagetop