魚と青年
僕といえば、すっかり出来上がった状態で、ヘラヘラ笑いながら魚の宇宙人にお酌している。

「まあまあ、日頃の鬱憤なんか、忘れて、パーと飲みましょうよ」

 調子のいい言葉を口にしながら、魚の宇宙人の持つコップにビールを注ぐ。

酔っ払った僕には、魚の宇宙人が職場の上司か何かに映っていたのかもしれない。

「若者よ、ずいぶん顔が赤いが大丈夫なのか?」

「これくらい何ともありませんってば、アハハハハハ」

 アハハハハ、と笑い続ける僕を魚は不安そうに見ていた。

「地球の人間はずいぶん、感情に波があるのじゃな~。これが現代人のストレスというものなのか?」

「ハハハハハハハ。ストレスだってぇ。確かにストレスは溜まっているかも。大体、何で宇宙人が俺の家の風呂に入ってんの?おっかしいよねぇ」

 酔っ払った僕は、すっかり支離滅裂状態だ。

「ワシはな、地球に観光に来たんじゃ。予定は今日までで、本当は宇宙船がこの部屋の風呂場まで迎えに来てくれる事になっておった。お前に見られても、記憶を消すつもりだったからいいのじゃが、帰りの宇宙船が事故に巻き込まれて修理に時間がかかるんじゃよ。地球の時間にして一週間。お前の所で世話になってもいいかのう?」
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