魚と青年
「え?いいって事よ。アハハハハ」

「おお、地球の人間は親切じゃな~。それじゃ、その言葉に甘えさせてもらって世話になるぞ?」

「任せっておけって事よ!」

 僕は胸をドン、とたたいて魚の宇宙人の肩に自分の腕を回した。そして、朝まで、出身大学の校歌を歌い続けた。

 さて、ここではっきり言っておく。僕に、こんな事を言った記憶は一切ない。

 これまで話した事は、朝になって二日酔いになった僕に魚の宇宙人が話した事だ。

そんなことを言われても信用できない、と言った僕に魚の宇宙人はビデオカメラのような機械を取り出して僕に見せた。

 その機械は地球のそれよりも、ずっと高性能でコンパクトだった。

 地球でいう携帯電話ぐらいの大きさで、画像もそのまま見る事が出来るのだ。

その画像の中で僕は本当に質の悪い酔っ払いで、笑い続けながら魚の宇宙人が説明した通りの事をしていた。

 正直言えば、半信半疑な面もある。

 僕には、どうして魚の宇宙人と酒を飲むに到ったのか、その記憶さえなかったからだ。

 もしかしたら、僕は魚の宇宙人の罠にかかってしまったのかもしれない。
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