魚と青年
それなのに、魚の宇宙人はいつでもどこからか新鮮な食材を調達してきて、バラエティー豊かな料理を食卓に並べてくれる。

「簡単なこっちゃ。魚は海に潜って捕まえる。肉は無人島のヤギをちょいと拝借してきた。今、その無人島ではヤギが異常繁殖して困っとるんじゃと。テレビでやっとったわ」

「え?」

 言葉を失うとは、こういう事を言うのかもしれない。

どうやら魚の宇宙人は天性のハンターでもあるらしい。おそらく、目の前の魚にそっくりな生き物は、どこに行き着いたとしても一人で図太く生きていく事であろう。

「そうそう、ヤギはミルクも得られるからチーズとかも作れるんじゃ。本当に便利じゃろ?」

 便利なのはあなたです。魚の宇宙人。

「じゃあ、この野菜は?」

 僕は、新鮮で取れたてのように見えるシャキシャキしたレタスを箸でつまんだ。

 まさか自己栽培したなんて言わないだろうな?

「野菜は買いに行ったんじゃ」

「ああ、ナルホドね!買い物に……って無理だろ!」

「何で無理じゃ?買い物ぐらい行けるぞ」

「金は?それにそんな姿で買い物なんかに行ったら、捕まえられて、どっかの大学の研究材料にされるだろ!」
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