~Snow White~『ニ巻』
「だって……私が父の葬儀に行った時
兄が怖くて電話したけど
竜はいなかった・・・・・。
洋ちゃんが、私の様子に気づいて
迎えに来てくれた。
洋が来てくれなかったら私はまた兄の
手の中から出られなかった。
うれしかった・・・・。
でも本当は竜に来てほしかった。」

 葬儀の時・・・・
 夏絵と一緒にいた・・・・


あの時から距離が縮まったことを
竜平はおぼえていた。



「忙しかったんでしょ?」



「覚えてない・・・」



「ごめんなさい・・・・
こんなことになるなんて・・・・
おじさまにもご迷惑かけてしまって・・・
兄は、怖い人よ。
あの若さで父が死んだあと
あの会社を自分のものにしたわ。
あの年で、今は海外も狙ってる・・・・
やると決めたらどんな手も使う・・・
兄が怖いの・・・・・。
いつか私もきっと兄の手の中に・・・・」



竜平が利香を乱暴に押し倒した。



「おまえは俺のものだ。
洋平だって、大槻にだって・・・
誰にも渡さない。」


竜平の目の奥が光っていた。

 怖い・・・


利香は体を固くした。
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