~Snow White~『ニ巻』
「ごめん・・・・・
いいわけはしない・・・・・
夏絵を大事にしたい・・・・・
苦労してきた夏絵を守ってやりたい。
みんなが高校生活を楽しんでる時でも
夏絵は家の事情で必死に
アルバイトをしてた。
カサカサの手で赤ちゃんだった弟を
育ててた・・・・。
いつしかそんな夏絵を俺は
抱きしめていた・・・・・。
幸せにしてあげたいって・・・・・」



利香は鏡を見つめていた。



「竜・・・・わかったわ。
もうそれ以上言わないで・・・・・。
これ以上、その人のこと好きな竜の話は
聞きたくないから・・・・・。
幸せになって・・・・ね・・・・。」



利香は寝室から袋を持ってきた。



「これ、竜に買ったの・・・。
受け取ってくれる?」



「ありがとう・・・・」
差し出した手に利香の涙が落ちた。


「利香・・・・・」



「もうわかったから・・・・
帰ってくれる?」




「わかった・・・・じゃあ・・・・」
竜平がもしもう一度振り向いたら

「努力するから別れないで…」
そう言おうと鏡の中の自分と賭けをした。


しかし・・・
玄関から出る竜平が後を振り向くことは
なかった・・・・・。



玄関のドアがバタンと閉められた。


利香はその場で座りこみ
声が枯れるまで泣き続けた・・・・・・。


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