~Snow White~『ニ巻』
かかりつけの病院で
傷の手当てをしてもらった。


「警察に届けないのかい?」



「いえ。
恨みはしょっちゅうかってます。
こんなちっこいことで
騒ぎたくないので。」


利香を訴えることは
できない。
そこまでして自分を拒否する
利香が愛しくもあり
憎らしくもある。



 おまえがそういうつもりなら
 もっともっと追い詰めてやる。


稔は自分の思い通りにならない
利香をどうしても手にしたいと
また強く思っていた。



携帯が鳴った。


大柴の会社にスパイとして
忍び込ませている
三島 聡 からだった。



三島は、稔がひいきにしている
料亭の三男坊だ。

店が傾きかけた時
手をかして
今も料亭は営業している。

少し変わりモノだった三男坊は
恩返しがしたいと
大槻建設の札幌支店に
面接を受けにきた聡に


大柴のスパイとして
ライバル会社の情報を流す仕事を
させていた。


意外と親孝行だった聡は
稔を恩人として
尊敬していた。


大柴竜平にも気にいられ
稔の要求通り動いてくれていた。
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