~Snow White~『ニ巻』
「私だって、みんなみたいに
自分のことだけ楽しみたいって
思うことあるよ。
そう思ったら、トモに申し訳ないって
思いながら……
何してんだろって虚しくなるんだ。
たま~~にだけどね。」


夏絵の顔は曇っていた。


「こうやって他の人と
遊んだことも初めてなの。
ありがとね。」


よく見ると
夏絵の指はあかぎれでカサカサしてる。


「他人の家で望まれなく暮らすのが
つらいよ、だから働かなきゃ・・・
少しでも邪魔に思われないように
笑顔で働くんだ。
トモと生きていくには
誰かの手を借りないと……
早く大人になって
二人で誰にも気兼ねなく暮らしたい。」


「リュウの彼女はキレイだよね。
真っ白でトモの肌みたいに
触らなくても伝わってくる。
なんだか恥ずかしいな…私…」


カサカサの指を隠した。


「頑張ってる手だよ。
恥ずかしがることなんてないよ。
エライ、おまえすごいよ。
おまえ見てると恥ずかしくなるのは
俺の方なんだけど…」


夏絵の涙がポツリ ポツリ落ちる。


「うれしいよ…」
震える肩を思わず引き寄せた。

夏絵は声をあげて泣いた。

竜平には何か利香とは違う
感情が大きくなるのがわかった。
< 98 / 351 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop