手のひらの終焉
リャウカはポケットからシルバーのケースを取り出して、

中から数本の針を手に落とした。
 
それを投げやすいように手に持ち直す。
 
と、出入り口に掛けられたじゅうたんが揺れた。
 
誰か出てこようとしている。
 
リャウカは身を潜め、ぬっとじゅうたんの隙間から

顔を出した男の首を目で捉えた。
 
数本の針を唇に加え、一本だけを右手につまんだ。
 
眠そうな男の目が、少しはなれたテントに移る。
 
それから、中央の地面に倒れている見張りに目をやると、

やっと、我に帰ったような表情で、

「おい、見張りが」

 中の者に声をかけながら体をだした。
 
リャウカは男が完全にじゅうたんのこちら側まで来てから、

男の首に、針を付きたてた。
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