手のひらの終焉
敵はのうのうと野営していた訳ではなかったのだ。

テントの周囲に周到にトラップが仕掛けられてある。

どうやら、リャウカの来訪を、先方は承知しているようだ。
 
リャウカはつま先でつついて、地面に低く掘られた

囲いのない井戸にそれを落とした。
 
手榴弾は垂直方向に火を噴く。
 
リャウカは、井戸から離れて身を伏せた。
 
中から爆音がし、吹き上げられた水がリャウカの体に

ばらばらと落ちてきてかかった。
 
「あの狸おやじめ」
 
リャウカはつぶやいた。

さっきのテントにいたあの銀髪が、組織への置き土産に、

リャウカがこちらへ向かっている事を教えたに違いなかった。
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