手のひらの終焉
リャウカは一歩、カーテンに向かって進んでみた。

「動くなと言っただろう」

ノインはきっちり察知していた。

「お前の動きは手に取るように分かるのだ」
 
なぜだろう。
 
欄間が頭から離れない。
 
欄間とは昔、ふすまで仕切られた隣の部屋で

たいた香の香りが、隣室に伝わるように作られたものらしい。

それが、形だけ残ったものだと聞いたことがある。
 
実際、リャウカも何度か朽ちた家の中で見かけたことがあった。
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