手のひらの終焉
かろうじて形が見えるだけなのが残念だ。

しかし、彼女がくれた香水がこんな役に立つとは思いもよらなかった。

微妙な香りを嗅ぎ分けられるノインにとって、

強い香りが命取りになった。
  
「しまった。マモウルのいる場所を聞き出すのを忘れてた」

これじゃ、ここに来た意味がない。
 
ノインに対する積年の恨みを晴らしにわざわざやってきたわけじゃない。
 
リャウカは、カーテンの向こう側に戻った。
 
こっちに、真っ赤に彩色された、悪趣味なドアがあった。

窓がある部屋に続くドアらしかった。
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