手のひらの終焉
かつての地球は、

衛星である月の引力のお陰で自軸がわずかに傾いていた。

そのお陰で四季というものがあり、

一年というほぼ完全な時間を刻んでいたようだ。

その頃から、一年で数センチ、月は遠ざかり続けていた。

けれど、誰もそれを気にする必要はなかった。

その影響は、ほとんどなかったからだ。

そんな幸福は、今では、過去の話だ。

月の強力な引力の支配から、今まさに、

地球は放り出されてしまいつつある。

ぐらぐらする自軸のため、気候は安定せず、

人の住める星ではなくなっていった。

それでも人類は雑草のごとく生き残り続けた。

残された数少ない人類。

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