Honey Love
「……」
「……」
ベルを鳴らす正体が分かり、ふたりで苦笑い。
「楽しみは、夜までとって…「きゃあああっ!」
凜久が話している途中で、私は脱衣所のドアが少しだけ開いていることに気付く。
そこから、形を歪ませた瞳がこちらを覗いている。
「……っ」
眉間にシワを寄せた凜久が、そのドアをスパーン!と勢いよく開け放った。
「――…、あ…えへへ」
「あ、あおい……!」
な、なんで……!
だって、ベルの音っ。
ズカズカ歩いていく凜久の先。
玄関でベルを鳴らしていたのは
「――ヨウ」
「……悪ぃ」
――スパン、スパーンッ!
「……ったぁ!」
「何で俺まで……」
置いてあったスリッパで、凜久がふたりを叩いたんだ。
先に桜を見に行っていたあおい達は、私たちが来ないことを心配して部屋まで来てくれたんだ。
「だから言っただろ……」
「ぶー」
呆れ顔で呟くヨウくんの隣には、唇を尖らせたあおい。
「じゃあ、夜桜は送れるなよ」
そう凜久に告げると、未だ唇を尖らせたままのあおいを引っ張って出て行った。
「も、もうこんな時間だったんだね」
気が付けば、外はもう薄暗くなっていて時計の針は6時を回ろうとしている。