Honey Love


「すご……っ」

隣の凜久も、目を大きくさせて、桜に魅入っている。


藍色の空に、まるで手を伸ばしているような枝ぶり。

その形は、空を讃えているようにも

届かないと分かっていても、必死に手を伸ばしているようにも見える。


空に向かって扇型に広がった大きな桜は、今までに見たことのないくらいの迫力。



「約束しよう?」

桜を映していた凜久の瞳が、夜色に色を変える。

深い色をしたその瞳に吸い込まれてしまいそうで。


でも、逸らすことなんて出来ないんだ。

いつもこの瞳は、私を捕らえて離さない。



「次来た時は、3人でいるって」

その意味を理解するよりに先に、私はコクンと静かに頷いた。




「意味分かってた?」

白い湯気が立つお風呂。

夜空には満点の星。


後ろには、バスタオルを巻いた凜久が。



「……や、来ないでぇっ」

――ゆっくりと、だけど確実に迫ってくる気配がする。



あれから旅館に戻って来た私たちは凜久に促されるままに……

お風呂に入ってしまったんだ。


条件を付けて。



「ちゃんと条件守ったのに。ヒドいよ瑠璃」

私が先に入ること。


と、本当はこういうお風呂でバスタオルは巻いちゃいけないんだけど。


巻くって条件で。


凜久と一緒にお風呂に入ったんだけど。


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