Honey Love
時計の針がちょうど6時を示した頃、インターホンが鳴った。
「凜久くんすごい不機嫌だったわね」
畳の部屋へとあおいを迎えた私は促されるままに鏡の前へ。
「この前の……少し根に持ってるみたい」
やだ、あおいってば……本当に悩んでるの?
あれは私も悪いのに……。
「さ、服脱いで?」
「え?」
「浴衣着るから」
「で、でも……」
「お祭りには行けないけど、雰囲気っていうか」
――それくらいは出せるでしょ?
せっかく用意したんだから。
服を脱いだ私は、水色の花柄の浴衣に袖を通す。
やっぱ瑠璃は水色が異常に似合うわね。
“異常”って言葉が妙に気になるところだけど。
そう言って誉めてくれた。
「あれ? もっとキツく締めるものだと思ってた」
着物も浴衣も、帯が落ちてこないようにギュウギュウ締めるイメージがある。
あれは……着物だけなのかな。
「ま、それは後で分かるわよ。それに外に出る訳じゃないから」
「そっか……」
藍色の帯を締めれば、完成。
「瑠璃が終わったら今度はあたしのを手伝って?」
「もちろん」
大きな袋からは、黒い浴衣が覗いてる。
この後のヨウくんと約束している時間は7時だから十分間に合う。
髪を斜め上へとまとめて、コテで巻いてワックスで散らしていく。
トップに止めた赤い花が連なった髪飾りは1番のお気に入り。