Honey Love



今でも鮮やかによみがえるのは、季節を巡る、思い出たち。


いつだって隣には、凜久がいてくれた。


凜久が……
いてくれたから――。



自分でも、気が付かなかった。

小さな気持ちが、自分の心の中に芽生えていたなんて。




「――…送辞。春を感じさせる風が校庭を駆け抜け、桜の蕾が色づく今日…私たちは卒業式を迎え」


3年生代表の子が、教壇に立って送辞を読み上げる。


卒業――…なんだね。



「真新しい制服に袖を通し、桜が舞い落ちる中…校門をくぐり」

送辞の言葉が、私の頭の中を通り過ぎていく。


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