夏と秋の間で・乙

「サンマって呼ぶなよ。ノゾキ。」



 彼女の名前は『太刀魚(たちうお)亜紀(あき)』どこか苗字の漢字が「秋刀魚」に似ているため、望巳と速人はそう呼んでいる。



「似たようなモンだろう?」



「違うって言ってるジャン。あ、一本頂戴。」



 望巳は今口にくわえている物だろう?



「タダでか?」



 タバコ税増減で、今望巳が吸っているものが一本15円。



 メール料金より高い。



「ケチくさ・・・・これでどう?」



 言いながら亜紀が取り出したのは、今月号の『アニメ―ジュ』。



「・・・しゃあねぇな。」



 自分がオタク体質だとは思いたくないが、表紙に「Vガンダム映画化」と書かれている以上読まないわけには行かない。



 タバコを一本取り出し、亜紀の口にくわえさせると、火をつける。



 同時に手渡されるアニメージュ



「言っておくけど、貸すだけだからね。」



「分かってるよ。」



 挨拶もそこそこに表紙を開くと、男同士が抱き合っている絵が大きく載っていた。



 なるほど、亜紀が喜んで買うわけだ・・・。

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