夏と秋の間で・乙
「俺さ・・・麻美と付き合うコトになった。」
そんな言葉を歩から発せられたとき、悪い冗談だと思った。
いつから、そんな笑えない冗談を言うようになったのさ、歩?
「そっか・・・おめでとう。」
だけど、それから発せられる言葉は賞賛の言葉。
なんで?・・・あなたは私と結婚するんだよ・・・。
成長するとは、嘘つきになるということ・・・。
このとき、初めて知った気がした・・・。
「だけど、なのはとはコレまでどおり友達だから・・・あまり気兼ねなくしようぜ。」
なんて・・・都合の良いヤツ・・・。
なんて・・・身勝手なヤツ・・・。
初めて、歩に殺意を覚えた瞬間だった。
それから先の出来事は、自分でもあまり覚えてない。
記憶がその頃の記憶を遮断して、掘り起こすことを拒絶しているのだろう。
それで良い。
そんな辛いこと思い出したくもない・・・。
だけど、唯一覚えていることは、私の『男遊び』はそこから始まったということだけ・・・。
別に今まで一度も異性から告白されたことがなかったわけではなかった。
望む望まないに限らず、私の運動神経は非常に高く、成績も上位ランク。容姿だって異性受けする顔立ちをしていたし、人当たりも非常に良かった。
今まで歩という存在がいたにもかかわらず、私にアタックしてくる男子はソレこそ星の数ほどにいた。