夏と秋の間で・乙


 麻美たちとのダブルデートがうまくいったのは、ひとえに彼がいてくれたからだと言っても過言ではない。



 もし、私一人で行ったら、間違いなく昔の私に戻っていただろう。


 だって・・・麻美も・・・歩も・・・私の大嫌いな二人のままだったから・・・。


 だけど、望巳くんだけは、彼だけは何をするでもなく、驚いたコトに私にも気を使うでもなく、ただそばにいてくれた。



 黙って静かに・・・あからさまに私たちの身内の集まりなのだから、つまらないはずなのに、文句を言うでもなく・・・だけど顔だけは常につまらなそうに、そばにいてくれた。



 それが、ありがたかった。



 それが・・・とても安心できた・・・。


 だから、認めたくなかった。



 彼を好きになったらまた、後悔する。



 分かっているのだ。


 彼には既に彼女がいる。



 1組にいる太刀魚亜紀さん・・・。



 私から見ても素敵な女性だ。



 お似合いの二人だ。



 彼は否定していたが、あんな子供だまし、私に通じるものか・・・。



 望巳くんに惹かれるのは亜紀さんがいるからに違いないのだ。



 なのに・・・



 分かっていたのに・・・・・・・



 なんで、私はあんなことを口走ってしまったのだろう・・・。



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