夏と秋の間で・乙
「もしかして、デートの帰りか何か?」
「いや、試食会みたいなものをね・・・。」
「そう・・・なんだ・・・楽しそうだね?」
「まあね。」
そこまで口にしたところで、袖を引っ張られた。
顔を向けると、亜紀が渋い顔で、顔をうつぶせているのが見えた。
・・・・・あれ?もしかして、この状況まずいかな?
「もう、遅いし早く帰らないといけないから・・・。」
小声だけど、確実に聞こえる亜紀の声。
・・・・・・・・この人とあまり話さないで・・・・。
その表情が言っていた。
「あぁ、そうだな・・・それじゃあ、早川さん。またね。」
「あ・・・・・・うん・・・またね・・・。」
その表情に、寂しげな影が見えたのは気のせいだろうか・・・。
・・・・・・・・『自意識過剰だ馬鹿』・・・・。
速人の言葉が頭をよぎる。
そうだな・・・そんなこと、あるはずがない。
俺はどこぞの先輩と違い、飛びぬけて美男子と言うわけでもないし、運動も勉強も並。人付き合いだって、そこまでうまくはないのだから・・・。