夏と秋の間で・乙
「・・・・・そういえばお前、早川先輩をフッたんだって?」
早川先輩といえば、赤塚学園ではカリスマと言われるほどの、ナイスガイ。
この弱小の赤塚高校サッカー部を国体寸前(つまり県大会決勝)まで導いた伝説の10番だ。
おまけに、成績優秀。後輩の面倒見もよく、容姿もそのままモデルと思えるほど。誰もが認める赤塚学園の生徒会長である。
さすがの富所先輩も、早川先輩には頭が上がらない。
「うん。なんで知っているの?」
「知らなければ、この学園の人間じゃねぇよ・・・。」
学園内の一大ニュース。春休み前は、その話題で持ちきりだったほどだ。
「だって、私好きな人いるし・・・。」
ソレは、知っている。
相手が誰なのか一度も教えてもらったことはないが、この学園にいる誰かであることは確かだ・・・。
「それでも、早川先輩だぞ・・・。お前みたいなホモアニメ大好きで、イベントの度にわけの分からないコスプレをやっているような人間には、普通、絶対に訪れないようなチャンスだぞ。」
「別に、望んでいたチャンスじゃないもん。それに・・・。」
亜紀は大きくタバコを一息つき。
「女に男の気持ちは分からないよ。」
紫煙と共に出た声は、どこか寂しげだった。
「まぁ、確かにな・・・・・。」
望巳はタバコを大きく一息ついて、空を仰いだ。