夏と秋の間で・乙

「そうでもないよ・・・。特に男連中に誕生日を祝う感覚なんてないし・・・。」



「へぇ~・・・あ、んじゃなのはは?」



 うっ、そのネタを持ってくるか?



「え?だから彼女は・・・。」



 さすがに、本気で慌てた。



 他の誰に誤解されてもいいが、彼女にされるのだけは困る。



「フフフ・・・冗談だよ。あ、ちょっと待ってて。」



 言いながら、大場さんがカバンから取り出したのは、一冊のバイク雑誌。



「はい、これ。誕生日プレゼント。斉藤君こういうの好きでしょ?」



「うん・・・でも、どうして?」



「ヘヘヘ、実は私も好きなんだ。バイク。」



 すごい意外だった。



 こんなところで自分と大場さんとの共通点を見つけるなんて・・・。



「ありがとう。でも、いいの?これ最新号だけど・・・。」



「いいよ。私はもう一冊買うから・・・・。せっかくの誕生日なのに、誰からもプレゼントをもらえないなんて、私だったらイヤだもん・・・。だから、ハイ!あげる。」



 ・・・・・・なんて、素敵な女性なんだろう。



 望巳は感動から、思わず涙腺が緩み眼から涙を抑えてくるのを必死に抑えた。
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